自分を愛する方法-恋の悩みに効くキルケゴール哲学

自分を愛する方法

笑顔のひとみさん

2020年8月、玄文社より、恋愛コラムニストであったひとみしょうさんの著作『自分を愛する方法』が発売されました。
現代人が抱える「なんとなく淋しい」という感情を、キルケゴール哲学からヒントを得て、実践的に解決していこうという本です。

哲学と聞くと、難しそうで構えてしまいますが、主人公の悩める女子「理子」とキルケゴールの生まれ変わりの猫「せーちゃん」のやりとりで話が進んでいくので、とても読みやすくなっています。

ひとみさんの簡単なプロフィールをご紹介いたします。

ひとみしょう作家/コラムニスト/作詞家。1975年香川県生まれ。『Menjoy!』(小学館)『TRILL』などにおける恋愛コラムのレギュラー連載を経て、女性向けWebメディア『Angie』の初代編集長に就任(現在は退任)。

現在、『ひとみしょうのお悩み解決』など、Webメディアにおいて多数の連載を抱える。
小説『鈴虫』Amazonで絶賛発売中。日本大学通信教育部文理学部哲学専攻卒(首席)。キルケゴール協会会員。日本自殺予防学会会員。
20余年にわたりほぼ独学で取り組んできた「なんとなく淋しいとはなにか」という問いに決着がつきました。

ひとみさんがこの哲学に出会ったことで変わったこと

話をするひとみさん

元々、「さみしさ」をテーマに小説を書いては修正するということを繰り返していたひとみさん。
ある日、とある広告記事をきっかけに、『乳と卵』などの著者である芥川賞作家の川上未映子さんが、日本大学通信教育部文理学部哲学専攻科を卒業されていることを知ります。

「小説はテーマ=哲学をもって書かねばより良くすることはできない」と感じ、自身も同学部に入学。当然、卒論のテーマは「さみしさ」でした。

しかし、卒論の指導教員に「哲学において『さみしさ』という形容詞はない」と言われ、今まで触れることのなかった基本的な哲学者を知ろうと試みます。

指導教員の的確な指導もあり、そのときはじめて、自身が描きたかったテーマである「さみしさ」は、哲学の世界においては「絶望」と呼ばれていると知ります。

ーひとみさんがこの哲学に出会って変わったことを教えてください。

これまでは、「なんとなくさみしい」や「言葉に表すことのできない不安」という「空気感」を言語化できずにいましたが、キルケゴール哲学に出会って、その空気感を適切な言葉で表現することができるようになりました。

「さみしさ」に限らず、人生におけるあらゆる難問は、言語化することで、「どうしたら良いか」を「考える」ことができるようになり、

すこしずつ改善に向かいます。その結果、ぼくの場合は、自分を愛せるようになり、生きるのが楽になったように感じます。

キルケゴール哲学は現代人にとって必要な哲学

ー 最近では、SNSが若い人たちにもたらす影響が社会問題になっていますが、いかがですか。

SNSが主流の現代では、多くの人が「他人に嫌われたくない評論家」になっていると感じます。
というのも、投稿をするときに、「こうありたい・他者に良くみられたい」といった演出をしてしまっている人が多いですし、その結果「SNS疲れ」している人もいますね。

キルケゴールの哲学は「今を生きることが大切だ」と、その方法や理由を語っているところがありますが、それは、他者の評価周りのことを気にしすぎている現代の人にはとても必要な考え方だと思います。

キルケゴールの名言として「人生は、後ろ向きにしか理解できないが、前を向いてしか生きられない」という言葉があります。
過去から学ぶことはたくさんありますが、「生きる」ということは「今」しかできないのです。

つまり、ことさら他者の反応を追い求めるのではなく、「今」自分を愛することで、もっと楽に生きることができるのです。

玄文社から出版したことでの変化

ー 出版後の変化について教えてください。

多くの人は話を表面では聞いていても、その背景や深い部分まではちゃんと理解できていません。言葉が理解できればなんとなく話自体は分かるからです。心の耳と書いて心耳(しんじ・しんに)といいますが「心耳できく」ことが大切だと実感しました。

というのも、私自身、出版後に、心耳できくことで多くのことを理解しようと努める中で、自分の執筆物の内容や進みが格段に良くなったからです。

また、本を読んでくださった人から多くのフィードバックがありました。Twitterやお手紙で「気持ちが楽になった」と連絡をもらうことも多かったです。

さらには、「先生」と呼ばれることが増えました。悪気がないのは承知の上ですが、僕に何を期待しているのだろうと考えてしまいました。
その結果、自分を俯瞰してみることができ、次の企画や新しいアイデアもうまれるようになりましたね。

2月はアマゾンで好調に売れた人生論分野で8位、恋愛論で5位

自分を愛する方法

ー この本を読まれる方とはどのような方でしょうか。

多分、Twitterで#タグ「死にたい」などとつぶやくような方はきっとこの本を読まないと思います。
そのような方々は、「善は急げ」と知っていても、それを実行に移せないですから。

また、私の友人で『ウツ婚!』という本を出版している石田月美さんという方がいます。
彼女は表面上は「普通」なんですが、ご著書にもあるように、メンタルクリニックで「病名」をもらっています。

そういう人もきっと読まないと思います。病名があるという「安心感」が、「素手でする系」の哲学を拒むのかもしれません。

この本を読んでくださる人は、その中間のカテゴリーに属するような、これまで「問題視」されてこなかった方々ではないだろうかと感じています。

ひとみさんはそうおっしゃっていましたが、Amazonの売れ筋ランキングでは「人生論」で8位「恋愛論」で5位という、玄文社から初の商業出版化した本としては快挙の結果に。

累計200万部を突破し、テレビCMでも話題になった吉野源三郎著・羽賀翔一漫画の「漫画 君たちはどう生きるか」を抜いての堂々たる結果です。

ひとみさんが想像している以上に多くの方の心に手を差し伸べているのではないでしょうか。

商業出版を考えている人へ

笑顔のひとみさん

ー 出版を考えている方へメッセージをお願いします。

まずなにより、出版社と「出会う」、つまり出版社に送ったメールに返信が返ってくる可能性が絶望的に低いと思います。

また、出版社は何社もありますから、「どのような出版社を選ぶべきか分からない」と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

私自身、複数の出版社にメールで応募しました。ネットで「原稿募集」「原稿 応募 受付」「出版企画 受付」などというワードで検索しては、適当と思われる出版社に応募しました。

しかし、中々うまくいかないものですね。
というのも、出版業界というのは、編集部と営業部の双方が売れると思わないと出版がきわめてむずかしいようなんですね。

編集部が「この作家の企画は売れる!」と強く思っても、営業側からすると書店で売れるものがほしいので、いくら編集部がいいと思っても出版されないことも多々あります。

しかし玄文社は、本の内容や作家の想いという「熱」の部分の価値を大切にしてくださるので、こうして玄文社と出会えたことは私にとって、文字通り奇跡でした。

具体的には、「ひとみさんのこの原稿に書いてあることは、多くの人にとって必要なことだから、なんとしても出版したい」「誰だって最初は無名だから」と、玄文社の後尾社長が言ってくださったときは、とても嬉しかったですね。
今思えば、ひとりの共感者、かつ出版権を持っている人、に出会えたその時こそが、人生が大きく変わった瞬間でした。

出版したいのでしたら勉強あるのみです。
それも、ただやみくもに勉強するのではなく、「正しい」勉強です。具体的には、本を読むこと。

私がお世話になった何人かの大学の先生は、「小説でも哲学書でも、読んだときに心にひっかかった『何か』を大切にしてほしい」と言います。

私自身、その、心に引っかかった何かを大切にするようにしていて、その結果ご縁に恵まれ、本を出せました。

その「何か」を掘り下げて勉強していくことが「独自性のある作品」につながり、引いては出版につながるのだろうと思います。
出版界は狭いらしいですが、でもしかし、協力してくれる人は必ずいるので、ぜひ諦めないでほしいと思います。

出版したことで、少し周りの人からみられる目が変わりました。
出版した人と、していない人との間に横たわる「溝」が、この世の中にはあるように感じました。

また、私が生活費を得ているネット上のコラムの世界は、テレビにおける視聴率同様、数字が全ての世界だと思って、いままでエッセイを書いていました。
だから、数字が獲れないと思われることを書くことは避けてきましたが、出版後は自分のベースを大切に、良い意味での「割り切り」ができるようになりました。

もちろん、数字を意識せずに書きたいことだけを書くことで、連載が減るケースもありました。連載が減れば、それに伴って収入も減ってしまうのですが、不思議と気持ちはとても楽です。

玄文社では本の出版も行います

自社グループで出版社を持っていらっしゃるので、私のように本を出したい者からすると希望を持てます。また、玄文社の編集者の方々はビジネスライクすぎず、感情や気持ちを汲み取ってくださり、とても丁寧に向き合ってくださいましたね。

出版のプロから多くの意見を聞けたことは、非常にありがたい経験です。

玄文社のグループ会社である「スタックアップ」を通じて出版に至ったひとみさんは、最後にこう語ります。

出版したいコンテンツがある方はぜひご連絡してみてください。

あなたにとっての「共感者」といっしょに、それを形にして世間に発信していきましょう。
「印税」よりなにより、「共感者」と一緒に出版したという、まさにその経験が、
きっとあなたの「財産」になるはずです。

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