プロレス書籍KAMINOGEが書店で人気のワケとは!書店営業に聞いてみた

創刊から9年目に突入する、玄文社発行の人気プロレス本の「KAMINOGE」。

2011年に休刊となった「紙のプロレス(kamipro)」(通称:紙プロ)の後継誌として創刊された本誌は、「世の中とプロレスするひろば」というモットーを掲げ、プロレス誌でありながら「特にプロレスを語らないプロレス本」として既成概念を打ち破った毎月発行のプロレス書籍です。

昭和プロレスに熱を上げたプロレスファンを中心に愛読されているほか、書店でも人気を集めるプロレス誌であるKAMINOGE。

そんなKAMINOGEが書店で人気の理由は、どういったところにあるのでしょうか?

今回はKAMINOGEが人気な理由を探るべく、書店営業をされているLibelove(リベロブ)代表取締役の木工本 真介さんにお話をうかがいました。書店営業についてのお話から、営業マン目線で見たKAMINOGEの魅力など、たっぷりお話いただいたので、ぜひご覧ください。

出版社の主役は編集者と著者。「外部から営業支援」の思いから、リベロブを創業

インタビュアー(以下:イ):KAMINOGEの書店営業を担当されているとのことですが、簡単な経歴とリベロブを創業した理由について教えていただけますか?

木工本さん:私自身、かつては出版社に勤めていました。

出版業界に勤めて感じたのは、出版社が注力するべき部分は、営業ではなく編集者や著者の想いである、ということです。出版社にとっての主役は、あくまで編集者や作品を生み出す著者です。

ですが、書店に本を置いてもらうには、営業もしていかなくてはなりません。より多くの方に編集者や著者の想いを届けたい、そのために必要な営業という部分を外から支援していきたいという思いで、リベロブを創業しました。

リベロブは2011年に東京で創業した出版社の営業を代行する会社。

現在は一都三県の書店を中心に訪問営業をしていて、既刊本の再展開や新刊の大型展開受注をはじめ、展開写真の撮影や書店ヒアリング、売行き調査などが主な仕事内容です。FAXや電話での営業もしていて、販促物の作成なんかも行っています。

 

書店営業の役割は、著者の想いを書店や読者に伝えること

イ:木工本さんが考える書店営業の役割について教えてください。

木工本さん:書店営業の役割は、著者や編集者の想いや考えを書店や読者に伝えることだと思います。

システム的な話になると、最近の出版流通は特に、適正な数をお届けすることが難しくなっているように感じています。著作物の再販売価格維持制度(出版社が書籍・雑誌の定価を決定し、小売書店等で定価販売ができる制度)と、販売委託制度(取次店を仲介して本を卸す制度)があるのですが、本来は本を積んで売れなかったら、返品できるようになっています。

売れ残った本は、再販売価格維持制度で価格が決められていますから、値下げして売ることもできません。そうなると、返品という形になります。しかしここ数年は特に業界全体で増えすぎてコストがかかる返品の数を抑える動きが強まり、以前のようには書店が返品出来ないのが現状です。その結果、返品率が下がったかわりに、書店は以前のようには思い切ってた仕入れはしにくくなっていると感じます。

 

書店の売り場はどうやって作るのか

イ:そういった現状があるのですね。読者に魅力に思ってもらう施策のひとつとして、ポップや装飾はじめとする「売り場づくり」があると思うのですが、そういった書店の売り場はどなたが作っているのでしょうか?

木工本さん:書店の売り場を作っているのは、書店員さんです。パッと目を引く売り場で本を見つけて購買意欲が生まれる…なんてこともあるので、売り場はとても重要ですよね。

主体となって動くのは書店員さんではありますが、私も売り場づくりに協力するケースもあります。著者や出版社の会員が多くいるエリアを情報提供したり、この時期にこの本の新聞広告がでるというお話を共有したり、テレビで取り上げられるタイミングをお伝えしたりと、売り場づくりに活かせるような販促支援を行っています。

 

書店営業は、どういう視点で売れる本を探すのか

イ:書店営業をしている方は、「売れる本」をどうやって探しているのでしょうか?

木工本さん:私は20代で出版業界に入ったのですが、当時の上司からは「主観をなくして、データで見ろ!」と教わりました。もちろん、直感や経験、気持ちの面も大切だと思います。主観も取り入れつつも、裏付けとなるデータに基づいて考えるようにしています。このデータと主観のバランスが大事だと考えています。

 

書店営業は書店とユーザーのニーズをどうすくい上げる?

イ:書店営業をするにあたって、書店とユーザー、それぞれのニーズを満たす必要があると思います。その辺りはどこを意識しているのでしょうか?

木工本さん:意識しているのはデータを元に主観で補う、ということでしょうか。実際に本を買ったり、ヒアリングをしたりすることもあります。書店員さんの意見もとっても参考になりますし、重要です。ただ、それだけで全てを決めるのではなく、様々なデータや培ってきた経験などを踏まえて総合的に判断するように心がけています。

 

KAMINOGEの魅力と強みとは

イ:KAMINOGEの魅力と強みはなんでしょうか?また、一般的なプロレス誌とどう違うのでしょう。

木工本さん:KAMINOGEの魅力は、プロレス+サブカル要素が詰まっているので、プロレスファン以外にも響くところだと思います。

皆さんもご存知の通り、近年はなかなか雑誌が売れにくいのが現状です。KAMINOGEは書籍と雑誌の良いところをとった間のような存在。これからの時代に向いている、新しい形態の売り方だと思います。

また、一般的なプロレス雑誌と売り場が違うことが多いのも特徴です。そのことでプロレスファン以外の読者にも届きやすい点が強みだと思います。ちなみに大型店さんでは雑誌と実用書(スポーツ)コーナー、両方に置いてくれている書店さんも多いです。

 

本や雑誌の売れ行きが下がりつつある今、なぜ書店でKAMINOGEは人気があるのか?

イ:近年は本や雑誌の売れ行きは下がりつつあると言われていますね。そんな中、書店でKAMINOGEが人気な理由は、どんな部分にあると思いますか?

木工本さん:先ほどもお伝えした通り、書籍や雑誌は特に書店で売れにくくなっているのは事実です。

それでも一般的な読者が書籍をどこで知るのかというと、やはり書店が多いと思います。ですが、書店で本を立ち読みした上で、気に入ればネットで購入するという読者はどんどん多くなっています。悲しいことに、書店が無料広告になっている印象です。ここは今後業界が改善していかなければならない課題だと思います。

書籍や雑誌もデジタル化してきたとはいえ、電子は読みにくいと感じる方も多く、これからも紙の需要はあります。本が好きな人はやっぱり紙で買っている方が多い印象です。また普段から電子書籍を利用していても、本当に気に入った本は電子と紙の両方で購入する、という読者も少なくありません。

そういった状況の中で書店さんがKAMINOGEを評価している部分は、「他の書籍にはない唯一無二の存在」というところだと思います。

KAMINOGEはプロレスファンだけに特化していないから、手に取る人はプロレス好きな方だけではありません。特集の中にはお笑いの情報も入っていたり、サブカル的要素も含んでいたりと、コアファンも引き寄せる編集や構成があります。

書籍でありながら、雑誌要素もあり、プロレスにサブカル的要素も含んでいる。ニッチすぎないのにターゲットは絞られているのはとても魅力。他の書籍にはない唯一無二の存在感である部分が、読者目線でもそうですし、書店で人気がある理由だと思います。

 

KAMINOGEの魅力をどうやって伝えるのか

イ:書店で扱ってくれるように、書店員さんにアプローチしていく必要がありますよね。木工本さんはKAMINOGEの魅力をどう伝えているのか教えてください。

木工本さん:弊社の役割としては営業の仕方という部分では、実売データなどを元に電話営業をしたり、注文書をFAXで送ったりという方法で行っています。

より多くの読者へ届けるためには、書店員さんに積極的に売ってもらわなくてはなりません。それに KAMINOGEは一般的なプロレス誌と違い、サブカル的要素も詰まった書籍なので、そういった部分を上手く訴求できるように書店員さんに提案や相談をしています。

KAMINOGEは表紙のファーストインプレッションや特集が面白い書籍です。先ほどもお話しした通り、プロレスファンをはじめ様々な層に響く本だと思っているので、KAMINOGEが持つ唯一無二の魅力が伝わるように心がけています。

また、以前KAMINOGEは別の出版社さんが扱っていたので、出版社がかわったタイミングで書店によって電話でご案内するまで疎遠になってしまったところもありました。また実際に営業していると、「KAMINOGEを継続してくれてありがとう!」といった声をもらうこともあります。

 

書店営業の立場で感じる、今後のKAMINOGEとは?

イ:貴重なお話をありがとうございました!最後に、書店営業という木工本さんの立場から見た、KAMINOGEの今後や展開などを教えていただけますか?

木工本さん:そうですね…、FAXやメールなどで送られてくる読者や書店の意見を上手く取り入れていくと良いんじゃないかなと思います。とはいえ、市場についての詳しい情報は書店さんだけでは把握しきれていません。

なので、バランスがとても大事。強い意志を持った上で、書店や読者から出てくる意見を上手に吸い上げていくことが重要なのだと思います。

 

唯一無二の魅力を持つ、KAMINOGE

書店営業として活躍する、Libelove(リベロブ)代表取締役の木工本 真介さんにお話をうかがいました。参考になるお話ばかりでしたね。

プロレスに詳しくなくても、面白おかしく読める毎月発行のプロレス書籍、「KAMINOGE」。雑誌ではなく書籍として販売されているため、広告がなく読みやすい点が魅力です。様々な視点から自由にプロレスの素晴らしさを伝えられる、新しい形態の書籍といえるでしょう。

玄文社では今後も引き続きKAMINOGEを追いかけ続けます!KAMINOGEは定期購読が断然お得!ぜひチェックしてみてくださいね。

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